旅するトナカイ

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でんしんばしら 2

「ねえ、ねえ。18番地のでんしんばしらさん」


「ねえ、ねえ。聞こえているのでしょう。どうして応えて下さらないのです」


「どうかなすったのですか」
「あいすみません。
いえね、今しがた、中年の男女がいと仲睦まじく
手なぞ、繋いで歩いていたものですから」
「それでどうして黙る理由があるのです?」
「いえね、今しがた、わたしの電燈に入ってきて
お互いの顔がくっきり見えたのでしょうね、
はっと見つめ合ったかと思うと、小さく口づけなぞしたものですから。
邪魔をしてはいけないと思ったのですよ」
「おやおや。それはそれは。
素晴らしいことではございませんか。
わたしたちは、こうしてお話は出来ますが、身体の向きを変えることもできない。
ましてや触れるなんてできやしない」


ただただ、互いを痺らせる電流を、送り合うばかり。