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ローズ・イン・タイドランド

ローズ・イン・タイドランド [DVD]

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同じ監督の映画は、たしか「ブラザーズ・グリム」を映画館で観たのだけれど、今となってところどころしか覚えていない。なのでこの作品が、この人らしいのからしくないのか、検討しようもないのだけれど。


どう考えてもこの作品は、文字の媒体の方が楽しめる。
苦境の少女が夢想へ走るというモチーフは、「パンズ・ラビリンス」を彷彿とさせたのだけれど、あの作品ほどこちらは夢と現実を(あからさまには)ごっちゃにはしていない。しかしでは、現実世界を完全に現実のまま描いているかというと、あくまで主人公の少女の視点で映されているので、ほんとうの悲惨さは直接には見てとれない。実際はあまりにも痛々しくて、ラストにはほっとするべき話なのだろうけれど、なんせ少女がずっとふっくらつやつやなままなので「なんかありえないくらい普通に元気じゃん」と勘違いしてしまった。不幸にまったくむしばまれてる感じがしない。
目で耳で色で形で映せてしまう「映画」で表現してしまったがために、隠しておいてほしいところも隠しようがなかったというかんじ。これがもし小説であれば、描かれていない部分を想像してぞっと背中を凍らせることもあったかもしれない。
ついでにカメラワークがどうもわざとらしいのが気になったけれど、でも現実→夢、夢→現実の流れのスムーズさは上手いなぁと思った。海のシーンとかアリスの穴に落ちるシーンとか、「こどものゆめ」っぽさがかわいかったし。
もっともっと、主人公フィルタどっぷりな作品の方が、わたしは好きになったかもしれないなあ。


それにしても、あのオレンジ色の草原と青空のコントラストは美しい。