旅するトナカイ

旅行記エッセイ漫画

ギター弾きの恋

ギター弾きの恋 [DVD]

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フォレスト・ガンプ」に次いで、ノンフィクションだと騙された映画。(笑) こちらは更にそれらしいドキュメンタリー形式をとっているのだから、ずっとたちが悪い。
ある天才ギタリストを、まるで実在したかのように、レジェンドを連ねて描いたもの。彼のギタリストとしての姿、そして真の恋にとまどう一匹の男としての姿を、古いレコードのような味わい深さで語っている。
この映画の価値はラスト5分にあって、それまではさっくり楽しめる長い長い茶番。しかしこの茶番を逃しては、そのラストの持つ重さも、監督のおちゃめな遊び心やイマジネーションも分からない。「我慢したもの勝ち」な、(この主人公のように)やらしいけども憎めない、そんな映画。
この核心部分には、絵本「百万回生きたねこ」と同じものがある。真の愛を知った者は、ようやく脱することができる、ということ。脱するというのは、輪廻の輪だったり世俗だったりしがらみだったり、とにかく、「もういいんだよ」って見えない誰かから言ってもらえること。
そしてそのテーマを、言葉を使わずに、ただ表情だけでまるっきり伝えてしまったショーン・ペンは最高。わたしはショーン・ペンの出演作品は思いつく限り2つほどこの前に観ていたけれども、これほどすごい人だったとは気付かなかった。まったく彼でなければきっとこれは伝わらなかったと思う。ギター演奏も名演技だし。
ともかくも、人は他者からの愛があってこそ、ということらしい。