旅するトナカイ

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裏庭

裏庭 (新潮文庫)

裏庭 (新潮文庫)

冒険ものを書くのは上手くないらしい。
梨木香歩は「西の魔女が死んだ」「ぐるりのこと」を読んだけれど、そういえばこの人は、たとえばため息が出るほどの美しいことばを紡ぐわけでも、風景が目の前に現れるような臨場感を演出するわけでもなかったように思う。
どちらかといえばミステリー的な、伏線とか話を繋げたりとかが好きな人なのだろう。文章がどうとかよりも、その「謎が解けたときの快感」によって良いと思わせる人なのかもしれない。
この作品は小学校のころに読んだ冒険物語のような類で、けれどどうも引きずり込まれるものが足りない。誰に読ませたいのか分からない。子供が読むには強すぎるし、大人が読むにはいまひとつ薄い。
人の心を動かすようなテーマもたくさん詰め込まれていて教育的なのだけれど、多すぎてひとつひとつさらっと終わってしまうし。「言いたいこと」はとても良いはずなのに。
ついでにキャラクターも多くて覚えられない。
でもちょっと、手を加えて映画にしてみたらおもしろいんじゃないかな、と思った。だって描いてる対象が、絵にすればきっととても美しいものばかりだから。もしも映画になるようなことがあれば、それは観てみたい。