旅するトナカイ

旅行記エッセイ漫画

骸骨ビルの庭

骸骨ビルの庭(上)

骸骨ビルの庭(上)

本の帯はさんざん煽るし、最初のフリはおもしろそうな匂いがするし、ドラマチックにしようと思えばいくらでもできたはずの作品なのに、あえて一番「静か」な道を選んだ。そんな話だったように感じる。
わたしは宮本輝ははじめてで、この作品も完全ジャケ買いだったのだけれど、
むさぼるほど引き込まれることはないけれど、軽く、すらすらと、おもしろく読める話だった。
上巻があまりに進展がなかったので下巻でどんな旋風を巻き起こすのだろうかと思ったら、同じく進展のないまま平坦に穏便に終わってしまう。でもだからこそ、あたたかさと柔らかさのある作品になっているのだろう。
もちろん人によっては「十分ドラマチックだったじゃないか!」と言うかもしれない。実際、3回ほどぐっときたし、驚くほどぽとんと決着がつくラストで鳥肌が立ったのも部屋の寒さのせいだけではないはずだ。
「ドナウの旅人」がかなりいいと両親に勧められたのでそれも読んでみよう。


ところでこのジャケットを描いているTAKORASUさんはすばらしいイラストレーターなので、ぜひ。


骸骨ビルの庭(下)

骸骨ビルの庭(下)