旅するトナカイ

旅行記エッセイ漫画

イントゥ・ザ・ワイルド

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

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私が最も尊敬する俳優の一人、ショーン・ペンが監督と聞いて。
彼の俳優業を見ていて思うのは、何よりもその演技力のすばらしさ。私はしばらく彼の演技力に気づきもしなかったけれど、それは、彼がキャラクターにあまりにもなりきっているから。画面の中の彼は「サムを演じるショーン」ではなく「サム本人」なのだ。だから見ていて「演技が上手いなぁ」なんて思わない。本人だから。


その、リアルさや演出力、「なんの疑いもなく本当のこととして受け入れさせる」力は、監督としてでも十分に発揮されていた。
まるでドキュメンタリーを見ているような。実際、話は実話なのでそれもそうなのだけれど、それにしたって。
雄大な自然、少年のフラストレーション、垣間見える人々の暮らしの負の部分、そして光。山、海、川、崖、森、空、動物、樹木。あらゆるものがあまりにも活き活きと、生命の躍動感をそのままに、カメラに封じ込められている。
クセとかオリジナリティとか、がつんと押し出される個性はなかったけれども、「良い」「悪い」はともかく確実に「上質な」映画を作ることを、その方法をすっかり心得ているようだ。彼の演技そのもの。


映画監督といえば何かしら個性を求めてしまっていたけども、こういう、ただ確実にきちんとしたもの、を作る人がいてもいいなと思うので今後も期待したい。


実在した人の話なのであまり言うとあれだけれども、もし私にもう少しいろんな能力が備わって生まれていれば、下手するとこの主人公と同じ道を辿ったであろうのでちょっと迫るものがあった。私もワイルドへ、と何度思ったかしれない。