- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
- 発売日: 2001/06/21
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けっこう有名な映画で、お店でもよくピックアップされてるのでコッテコテのアメリカ映画かと思っていた。
真っ暗な現実の中で、盲目の少女が描くミュージカルの幻想。
設定はアメリカで音楽も有名なアーティストを使っているけど、やっぱりこの湿っぽさはヨーロピアン。
こういう、「暗い現実と明るい空想のコントラスト」は「ローズ・イン・タイドランド」を彷彿とさせ、さして真新しい題材でもないのかな、と思うけれど、ただこの作品ではカメラワークや色彩、音楽でその明暗をくっきりと浮かび上がらせている。美しい歌が終わるときには、また一段、階段を下りている。
人が悲劇を観るのは、「本当の世界ではここまで悲惨なことはない」という”余裕”を自分の心に生んでくれるからではないか。本当の世界は、この映画の中の「現実」よりもまだましだと、足を浮かせられるから。
でもどうして、本当の世界はそんなに明るく見えるんだろう。
実は私たちが生きている生の世界でも、現実はあまりにも悲しくて、それを私たちが空想や幻想を上塗りして美しく仕立てあげているのかもしれない。生きるに値する人生だと、思い込ませるために。
私たちの眼に映るもの、それが本当に、”現実”かしら。
・・・いいじゃない、幻想だろうが空想だろうが、それで幸せなら。
主演のビョークがあまりにビョークで、まるでビョークの映画みたいになっていた。(笑)
つまりその、声だとか声だとか、にビョーク色が強くて、あの独特の声のムードがそのまま映画のムードになっている。
それを狙ったのならば大成功おめでとうだけれども、私ならもう少し没個性派の歌手を選ぶなあ。
しかし初主演にしてあの演技はほんとうにすごい。ビョークを観たのは初めてなのでどこからどこまでが演技なのか分からないけれど、ドキュメンタリータッチなのも手伝って、等身大の人間が目の前いに居る感じが出ていた。
「現実世界」の悲劇部分だけでも十分なドラマティック映画たりうるのに、そこに幻想と喜劇ミュージカルという一盛りを加えた贅沢さに、お腹はたいへん満足です。
工場のストンプ部分には思わずテンションが上がった。