旅するトナカイ

旅行記エッセイ漫画

【レポ】はじめての文学フリマ代行

華さんとの出会いは、7年前にさかのぼる。

 

 

「華さん」が何者かはこちら

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私と華さんはそれぞれに異なるジャンルで同人活動に勤しんでいる。

出会った頃、私は同人誌即売会旅行記マンガを販売しており、華さんはハンドメイド小物の作家さんだった。少なくとも出会ったその瞬間の華さんは、ハンドメイド作家の顔をしていた。

 


神戸でのイベントでたまたまブースが隣り合った。

そのイベントはハンドメイドが主体だったので、私のような自作の本を手売りしている作家はほとんどいない。

華さんのブースには刺繍のブローチやアクセサリーが並ぶ。ユメカワな色合い、女の子の理想の国にでてくるアイテムを集めたようなモチーフ。

ガサツで女子力が皆無な私には縁のない世界観だった。

社会人の挨拶ていどで深く関わることはあるまい…と思ってお互いにスンとしていた。

 


私が華さんに命を救われるまでは。

 


その日、私は数回目のイベント出店。設営やブース運営にも慣れてきた頃だった。つまり、最もミスをしやすいタイミングだ。

私はその日、釣り銭を一銭たりとも持ってきていなかった。完全に忘れていた。自分の財布にも一万円札しかなかった。

即売会イベントに出展する者として、三番目に忘れてはいけないものが釣り銭である。釣り銭を用意していないブースなど「売る気がない」と思われても仕方がない。ちなみに二番目に忘れてはならないものはサークル入場券、一番は新刊である。

 


運の悪いことに、その日はハンドメイド主体のイベントであるがゆえに、お客さんも「マニアックな同人活動に理解のある参加者」ではなく一般のお客さん層だった。コミケなどのイベントならほとんどのお客さんが細かい小銭を用意してきており、お釣りを渡すどころか小銭がコインケースから溢れかえることも多い。そんなことを今回の来場者たちは気にしない。それが一般常識だ。

とはいえ序盤のお客さんがちょうどの料金を持ち合わせてくれていれば、少しずつ手持ちの小銭が増え、釣り銭が生まれる。

 


しかし問題は、私は運が悪い。

私のブースをしげしげと見てくださるお客さんがいる。「細かいお金を持っていますように」と長机の向かいから念を送る。

 


「一冊ください」

「ありがとうございます!九百円になります」

「一万円でもいいですか」

 


知っている。私は神様に愛されていないことを。

 


私は慌てふためく。

「ええっと、今日、お釣りを忘れちゃって…」

「あー…」

周囲の空気がピシリと強張る。

 


「両替しましょうか」

隣から聞こえてきたのが、華さんの声だった。

あとあと分かってくるが、華さん、とにかく声をかける反射神経がハンパじゃない。引っ込み思案の私が「声をかけようか、やめようか…」と考え始め、脳内に「こぇ」が浮かんだ時に華さんはもう話しかけている。大阪の女の血がそうさせるのだろうが、大阪でもここまでの速さにはなかなかお目にかかれない。

 


ともかく、あと数秒はこの「どうしましょう…」という空気を味わうだろうシーンで、即座に手を差し伸べてくれたのが初対面の華さんだったのだ。

神は私を見放したが、天使が私を救ってくれた。

 


かくして私はピンチを逃れ、無事に本は売れた。

 


イベントの間、華さんとぽつりぽつり雑談をしていると、どうやらただのユメカワ刺繍作家ではないことが明らかになってきた。

一枚、二枚と皮を剥がせばジャニーズアイドルの強火ファン。当時は「強火」という表現はなかったが、華さんの言を借りれば「狂って」いた。

 


なんて面白い人なんだ!

 


はまったコンテンツを暑苦しく推し、内にとどめておけない感情をブログに垂れ流し、その文体は2000年代平成インターネットを駆け抜けたオタクの語り口そのもので、愛の推進力でどこへでも一人行動する。

人当たりは良いけど一人が好き、なぜなら自分のこの熱量と突発的な思いつきに人を付き合わせるのは忍びないから。こんな私みたいな人がいて、その人と出会えるなんて!

 


華さんはそれから、無職になったり、就職活動で探偵事務所を受けたり、いつのまにかコナンの沼にずぶずぶ浸かっていたりと、話題に事欠かない濃密な7年間を過ごしている。

 


その間に私は、旅行記マンガを書き続けたり、コロナで旅が制限され気を病み、やぶれかぶれに仕事に精を出して起業をしたり、しかしその反動で痛んで引きこもったり、それはそれでめまぐるしい7年間を過ごしていた。

2年ほどの休養を経て、そろそろ人付き合いも復活していこうか…、でも人前でついつい無理をする私はまだチューニングが必要かな…、と思っていたその矢先。

 


華さんと、東京コミティアを同伴することになった。

 


それぞれにサークル参加を申し込んでいることはお互いのSNSから知っていたが、「アフターをしませんか?」と誘いのリプライをくれたのは華さんの方だった。

アフターは別の約束があったのだが、しかし私はこのチャンスを逃すわけにいかなかった。

 


東京のホテルが、高いのである。

 


中国との国交が荒れるほんの少し前。観光の加熱で全国のホテルの価格が高騰しており、ひきこもり無職の私の手に届く宿はなかった。アラフォーの肉体に鞭打って夜行バスを利用すべきか…と悩んでいたまさにその時だったのだ。

 


またも天使が私に手を差し伸べた…!

 


しかし、いい大人ががっついてはいけない。この上なくシンパシーを感じている間柄とはいえ、華さんとのやりとりは数年ぶりだ。

「アフターは先約があるのですが、前後の予定はどうですか?」と探りを入れる。ついでに「私は移動も宿もまだ予約してないんですが、華さんはもうホテル取りましたか…?」と匂わせてみる。

 


私がウダウダと悩んでチラチラと「察して」をかますその「察s」の間に、もう声をかけているのが華さんである。

 


ビッグサイトから一本で行けるこのホテルが空いてます、値段は〇〇です、キャンセル無料です、一緒に泊まりますか?」「残り一室なのでもう予約しました」「シングルが良ければ別々でも」

話が早い。早すぎる。早い上に、もし距離感が近すぎた場合の配慮まで事欠かない。最低限の文字数で要件も判断材料も心理的安全性確保も全てをやってのける。文字書きとしての能力が高すぎる。

ちなみに華さんは自作のエッセイの中で推し活に関してかなりあけすけに心情を語っており、読むとこちらまで胸が熱くなるのだが、一方で「こういう表現をすると嫌な気持ちになる方がいるかもしれないので、念のため、こういう意図であってこういうつもりではありません」みたいな補足用紙を一冊一冊にさしはさむほど手の込んだ文字書きである。伊達にアイドルオタクの荒波を渡ってきていない。(アイドルオタク当事者でもない私が他人様の界隈を「荒波」などと表現して嫌な気持ちになるファンの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは決して皆様の趣味嗜好を揶揄したりファンの方を貶めたいという意図ではなく、(ここに華さんの全方位配慮型で誰も嫌な気持ちにさせない補足の文章が入る。))

 


かくして私たちは一晩限りのルームメイトとなる、はずだった。

 


華さんが高熱に倒れるまでは。

 

 

 

 

 

 

関西在住の同人作家たちにとって、東京でのイベント出展は特別だ。

東京ビッグサイトは、コミケが開催されるたびにニュース映像で目にし、オタクが目指す場所の頂点を象徴している。高校球児にとっての甲子園、ラグビー部員にとっての花園だ。(どうしても例えが関西になる。)

その同じグラウンドに立つことができるイベントが、コミケでなくとも東京にはたびたびあるのだ。

 


まず、「コミティア」。

オリジナル作品の本が並ぶ、コミケに次ぐ作家たちの憧れのイベントだ。アニメ化された漫画『これ描いて死ね』にも登場する。

そして近年、人気が鰻登りの「文学フリマ」。

こちらは、他のイベントでは「マンガ」勢力が強いのに対し、詩集や小説など「字書き」が主役のイベントで、全国各地で開催している。

 


なんと2025年11月には、この二つのイベントが連日、東京ビッグサイトで開催されるのだ。しかも三連休の後半。なんて贅沢なお祭りだろうか。

 


私にとって地元・関西のイベントはすっかりホーム感覚だし、地方のイベントは観光気分だ。しかし東京は違う。アウェー戦、全国大会への出場。たとえ負けても砂を集めて帰る、そういう心構えなのだ。

 


私はコミティアにしか申し込んでいなかったが、華さんは文学フリマコミティア両方参加されるらしい。2デイズのフェスだ。ちょっとしたフジロックだ。

 


しかし、その華さんがイベントの2日前、高熱に倒れてしまった。

繁忙期で残業続きの中、新刊を完成させた華さん。その無念はいかばかりか。

 


しかし、体調を崩しても要件と配慮を備えたコミュニケーションをとるのが華さん。

まず、2日前に「体調が悪く、明日インフルエンザの検査を受けてくる」という一報が入った。

 


その時点から、私に何ができるだろうかとモクモク考えを巡らせる。華さんの郵送搬入物など、当日会場で手続きが必要なものがあれば私が請け負えるだろうか。ついでに、私のブースに華さんの新刊だけでも置かせてもらおう。SNSに新刊の写真を投稿していたので、きっと自宅にあるのだろう。住まいは分かるので受け取りもできる。あ、文学フリマも、私が代わりにブース設営できるんじゃないか…?

 


翌日、華さんからインフルエンザの連絡が入り、私は即座に返した。

「もしよかったら、新刊、私のブースに置かせてもらえないですか?今日、自宅まで取りに行きます。前日暇なので、文学フリマも私が代わりにスペースに立てます。華さんさえ嫌でなければ…」

「いいんですか…ありがとうございます…」

 


ここからの動きは、速かった。

 


新刊を受け渡す日時、場所。

文学フリマの参加者案内、残部の郵送先、見本誌の手配。

コミティアでの欠席の案内、残部の郵送方法。

さらに華さんの予約していた文学フリマ合わせの移動手段(キャンセル期限は過ぎていた)の搭乗案内。ホテルはシングルで探し直しても高かったので、そのまま泊まることにした。

 


イムリミットは丸一日を切っている。翌朝は始発に近い時間で出発するので、猶予はない。頭と指をフル回転させ、華さんに準備してほしいもののリストを送り、華さんがそれに応える。

高熱を出して本来なら安静にすべきはずのところだが、しかし同人作家がせっかく刷り上がった新刊を放って寝ていられようはずがない。華さんの行動力なら、きっとやってくれる、やり切るはずだ。頑張れ、華。お前ならできる…!

 


準備完了の報を受け、受け取りへ。

ちょうど義実家からりんごが一箱届いたので、お見舞いに渡すことにした。

 


華さんが準備した一式の物品は、見たことのない信じられないくらいシャレていて上質な紙袋に入っていた。

中には、見たことないルタオのオシャレなお菓子も入っていた。「北海道のお土産です」と言っていた。旅行の時点から華さんの全方位配慮には抜かりがなかった。

中を確認すると、文学フリマコミティアそれぞれで使用するものがファイル分けされ、委託販売のお知らせの掲示物はわざわざデザインして印刷されたものが封入されており(私はマジックの手書きで対応しようと思っていたので危ないところだった)、さらに郵送搬入の中身とその使用方法、返送方法が書類にまとめられていた。高熱を出してるのにパソコンに向かいプリンターを稼働させていたのだ。頑張りすぎだ、華。さすがだ、華。(ここまでやるのがスタンダードではないと思うので、世の皆様は参考にはされても簡単に真似はされないでください。華さんがバケモノなだけなので。)

 

 

 

かくして、私は華さんのスペース代行を仰せつかった。

 

 

 

 

 

 

旅には、人それぞれのスタイルがある。即売会の東京遠征にも、同じことが言える。

自分なりに、値段や所要時間、体力の消耗具合などいろいろ勘案してあれこれ試しているが、未だにベストはなにか探り探りである。

遠征を代行することによって、旅慣れた華さんの旅スタイルを体験することができる。これは稀有なチャンスである。

 


華さんの選んでいた手段は、早朝にANA伊丹空港羽田空港へ飛び、そこで一時間ほど朝食の時間を空けて、シャトルバスで空港ー東京ビッグサイトへ直行する、というもの。私にとっては初めての旅程だ。飛行機はJALを使うことが多いし、ビッグサイトに行くのにシャトルバスは利用したことがない。

 


これが、試してみたらなかなかに良い!

当日はQRコードだけでスイスイと乗ることができるし、空港には充電ポートも充実、機内ではドリンクサービスもある。

機内の座席が前方の通路側だったことも、完全に私の好みと一致していた。前方は搭乗が最後で、降りる時には最初に出られるので、さっさと動きたい我々にはぴったりなのだ。

シャトルバスも、なんと羽田空港から30分ほど、座っているだけで着いてしまう。隣に乳幼児を抱えた方が座ったので、赤ちゃんとお互いの顔を観察しあっていたらあっという間だった。道路が空いていたので予定より早く、10時20分には到着。東京駅の大混雑を避けて会場入りできるなんて、なんというライフハックだ。(一方で、私はやっぱり国際展示場駅から少しずつあの悪の巣窟みたいなゲートへ近づいていく感動も味わいたい。どちらを取るか悩ましいところ。)

ついでに今回、華さんとやりとりして初めて知ったのが新幹線の「EXアプリ」の便利さ。私はe5489とJ-WEST(これって華さんのようなアイドルオタクだったら「あっち」の名前だと勘違いしたりするんですか?)の使い分け、東北新幹線東海道新幹線の接続の悪さに常時憤慨しているのでアプリなんて断じてダウンロードしてやるものか、と意地を張っていたのだが、華さんに言われるがまま利用してみたらこんなにもスムーズに新幹線を利用できるなんて思ってもみなかった。生涯の可処分時間に影響するので新幹線利用者は絶対にダウンロードした方が良い。

 


ピカピカの南ホールを目指して歩く通路は、バリアフリーでスーツケースもスイスイ。窓から臨む四角く切り取られた港はろうろうと波打ち、渡り鳥がいくつかの平行線になって飛んでいる。

 


南3ホールのブースに到着し、郵送搬入した荷物をゲットして設営に入る。他人の名義で入場するのは替え玉受験でもしているような後ろめたさがあるが、誰もそんなことを咎めてはこない。

華さんのブース設営は、テーブルクロス、ブックスタンド、コイントレイなど目に触れるものはもちろん、表には出さない道具入れの箱まで世界観が整えられている。

私がこのファンシーでエレガントな世界観に泥を塗るわけにはいかない。

時間がたっぷりあるのを利用して一度並べては変え、右にあったものを左へ、縦に並べたものを横へ、ああでもないこうでもないと試行錯誤した末に、設営完了。華さんに写真付きで報告する。どうですか華さん、あなたの世界をせいいっぱい再現しました!

華さんの世界観づくりは、売り子の私自身も含まれる。トイレに行って滅多にしないメイク直しをし、今日は髪をコテで巻いてまできた。

これでばっちり、少なくとも代行の及第点はクリアしているはずだ…!

 

そうそう、もちろん隣接ブースへのご挨拶も欠かさない。即売会イベントには、両隣のサークルさんに対してささやかなお菓子とともに「今日一日、よろしくお願いします」と挨拶しておくことでイベント中のトラブル等を円満に回避する風習があるのだ。近しいジャンルが固まって「島」になっているので、気が合えばそこからお友達に…なんていうこともある。

左隣はキャンセルで空席だったので、右隣へ。

ここであのアイテムが登場する。華さんの持たせてくれた、見たことのないルタオのお菓子である。

受け取った時には「ほえ〜ありがとうございます〜遠慮なくいただきます〜」なんてアホづらで頂戴したが、帰宅してから気付いた。私が食べるお菓子じゃなくてこれ、華さんがイベントでのご挨拶用に準備していたやつじゃないか!ばっかもーーーん、お前へのお土産なわけあるかーーーっ!私がありつけるとしたらそれは、イベントで配ったあとのおこぼれに与る時だろがい!

あぶねーあぶねー、すんでのところで気がついてきちんと荷物に詰めておいた。

お隣のサークルさんも素敵な方で、代理であることを伝えると「それは応援したくなる!」と優しい言葉をかけてくださった。しかしいかんせん私は始発起きの眠気で、軽妙快活なトークとはいかなかった。申し訳ない。

ちなみにルタオのお菓子のおこぼれには与り、さすがルタオ、美味しかった。

 


開場時間を迎えた。場内に拍手が湧く。

 


さあ、売れてくれ!!!!!

これで売れなかったら、華さんはしょんぼりしてしまうかもしれない!華さんをしょんぼりさせたくない!!

めちゃくちゃ売れてほしい!!

そんで華さんに「フサコさんに頼んで良かったです!」「こんなに売れるなんてすごい!!」と褒められたい、持ち上げられたい!!

「そんなことないです、華さんの力です」と余裕をブッかまして、華さんの中の私の評価が鰻登りになり、華さんに一目置かれたい!!!!

だから、売れてくれ!!!!!

 


と自意識過剰と自己保身全開で濁った念を発していたが、開場してもしばらくは、閑散としていて通路を行き交う来場者は少ない。「あれ?文フリって人気がないのかな…?」と不安になったが、どうやら入場待機列が長くてそもそも入るのに時間がかかったらしい。一時間もすれば途切れなく人が流れるようになってきた。

 


念が通じたのか否か、華さんのファンの方が何人か来てくださった。

Twitterで見ました、華さんの代理なんですよね」

さすが華さんのファン、Twitterでの土壇場の告知も見逃さない。

 


お知り合いなら華さんに言伝ようと「華さんのお友達ですか?」と聞いてみたら、

「友達ではないですが、Twitterをフォローしています」と口を揃える。

中には「華さんもフサコさんも両方フォローしています」という、何をどうしたらそんなベン図が重なるのか、という方も。

 


しかしなるほど、この方達も華さんのつぶやきを楽しんでいる仲間なのか。そう思うとことのほか親近感が湧く。この方も、私と同じように、華さんの推し活の様子や「甥ぴ」とのお出かけ、目に映るもの全てがコナンと結びつくのかというオタク特有の脳の回路に惹きつけられて目が離せなくなってる方々なのか。華さんのこの本を読んで、私と同じところに笑ったり共感したり救われたり、私とは全然違う感じ方と感想を持ったりする方々なのか。

きっと一人一人違うけど、それでも私と同じだ。私と同じ、華さんのファンだ。自分のスペースに立って自分の本を売るのとは、ぜんぜん違う嬉しさがある。

 


この方達にも知ってほしい、華さんが今回、来られなかったけどこんなにすごい対応をしたんだということを。華さんのエッセイで感じられる行動力と全方位配慮を今回も遺憾無く発揮され、「私たちの華」を完璧に演じ切ってくれたことを。インフルエンザでダウンしても変わらぬ、華さんのこのピンク色のパワーを。

華さんのファン同士で「華さんのこういうところがすごい」と讃えあってワイワイしたい。「この文章のここがいい」と互いの解釈をぶつけ合いたい。そんな気持ちが溢れてきて、そしてこんなふうに華さんを思っている人がいるんだと本人にも知ってほしくて、それでこのレポを書いています。

あの時ブースに来てくださった方々。読んでいますか。

 


その後も、通りすがりに気になって本を手に取ってくださったような方。裏表紙の目次で「あっ、〇〇したんですね」と反応してくださる方。いろんな出会いがあった。

私はあまりグイグイ話しかけるよりも、お客さんがその気になるまで待っていよう…というスタイル(のつもり)(だけど元がおせっかい関西人なので待っているつもりでもグイグイが元本割れしているかもしれない)なので、もっと押し売りしたほうが宣伝になるのかな…でもそれでは華さんのイメージとは違ってしまうかもしれない…など気にしながらスペースを守る。

あまりあれこれ会話せずにササッと買っていかれる方が多いのは、文学フリマの客層だからだろうか、それともそういう島なのだろうか?(私はふだん旅行記の島で参加するので、誰と問わず旅行の思い出話やおすすめ情報が飛び交い長話になるのだ。)

 


ところで、華さんのブースは先述のとおりファンシーでエレガントなピンク×白調の「いかにも女の子」という雰囲気なのだが、どうもさっきから、それとは縁遠そうな男性が目を留めていく。

いかにも太宰治が好きそうな文学青年という出で立ちの男性や、渋めのミステリーなんかを好みそうなオジサマたちが、華さんの新刊についと目線を縛られ、ブースに近寄り、見本誌を手に取ってパラパラ中身を見て「えっ?あっ、そういうことか…」というふうに無言で立ち去っていく。

なにか別の期待を抱かせているような…?と、華さんの新刊をしげしげと観察する。

 


確かに、表紙は濃くてフレッシュな色合いの紺。これまでの華さんの作品とはうってかわって、A5サイズで表紙は旅の写真。(これまでは可愛らしいイラストが使われた、ピンクや白が基調のご本だった。)色は「男性っぽい」感じはある。

 


そしてタイトルは、「紺青の華」。

 


……めちゃくちゃ純文学やん。

華さんをご存知の方には当然だが、これは名探偵コナンシンガポール編映画「紺青の拳」のもじりである。しかし前提知識がなかったら、そらもうジットジトの純文学。青年のグズグズした胸のうちややるせない現実、叶わない恋とかが描かれてそう。『惡の華』っぽさすらある。『惡の華』よりは、紺青なぶん少し爽やかな小説なのかな…?というかぐわしさがある。フォントもかっこいいから余計にそう思う。

 


初見で「ああ、華さんのコナンもじりね」と違和感を感じなかった私も、すっかり脳を華漬けにされていたのだと自覚した。

 

 

 

 

 

 

閉会を迎え、撤収作業。

私が詰めたこの荷物を華さんが開けるのだ…とドキドキしながらパッキングしていく。本を痛めないよう、どれが何に入っているかチグハグにならないよう気にしながらダンボールを詰め、華さんがあらかじめ記入してくれていた着払い伝票を貼り、宅配窓口へ。

ちなみにこの翌日にはレターパックで返送する作業もあったのだが、レターパックの問い合わせ番号のシールはしっかりと華さんが剥がして保管されていた。抜かりがなさすぎる。病気の時くらい、ちょっとは抜けていてほしい。

 


諸々の報告を華さんにすると、しきりにお礼の言葉が返ってくる。

私としては人生に一回あるかないかのお祭り気分ではしゃいでいたのだが、華さんにとっては気を遣うし気を揉むし、思ったことがあっても言いづらいしで、たいへんな心労だったことだろう。私ばかりが楽しい思いをしてすまなかった。しかし、このハプニングを共に乗り越えたという連帯感はきっと二人の間に芽生えたはずだ。と思う。(もしかしたら華さんにとっては「もう二度とごめんだ」という体験になっているのかもしれないが、(というか新刊発売のイベント直前にインフルにかかるなんて誰一人ごめんだと思う)私にとっては色々と感傷的な数日間だった。もし今後二人が表だったところで全くやりとりをしなくなっていたら「そういうことだ」と察してください。我ながら躁状態だった自覚はあるのでやっちまってるおそれはある。)

 


翌日のコミティアについては、

・華さんの新刊を私のスペースに並べ、華さんが用意したお知らせの紙をテーブルクロスに貼る

・華さんのスペースは椅子を下ろし、華さんが用意した案内の紙をマスキングテープで留めておく(かわいめのマスキングテープはこういう時に必要になると学んだ)

・華さんの見本誌を提出

・終了後は、案内の紙を回収し、残部を華さんに配送

という対応。

今回のコミティアの会場は南ホールの上階・下階に分かれており、その間の移動はかなりの時間を要するらしかった。たまたま華さんのスペースが同じホール内だったからスムーズにできたが、別ホールだったら遂行できなかった可能性も高い。

 


帰りの新幹線では、華さんの座るはずだった席にまったく違う人が座っている。「華さんとぺちゃくちゃお喋りしたり、または疲れてぐったり眠りこけたりするはずだった帰り道」の代わりに、このレポを書いて三連休の思い出を締めくくっている。

 


私はこれまで一人でサークル活動をしてきたので、いわゆる「サークル活動」、複数人の同好の士が集まって助け合いながら本を作る、というものと縁がなかった。売り子さんをお願いすることは多々あるが、サークル仲間ではなく私のお手伝い的な位置付けにどうしてもなってしまう。

今回、ピンチを乗り切るためにそれぞれにそれぞれのできるベストを尽くしたことは、擬似的な「サークル仲間」を体験できたような気がして感慨深かった。華さんも一人好きな方なのでそんな感じじゃないかな…と想像したりする。

それから「売り子」側の立場を体験できたことで、「売り子」ならではの喜びを知ることができたのも大きい。自分の本を売るのとはまた違う緊張と楽しさがある。今までお世話になってきた売り子さんには「申し訳ない」という引け目が強かったのだけど、サークル主にはサークル主の、自主作品を世に送り出す重圧と喜びがあり、売り子には売り子の、ハレの日に参加する高揚とファン同士で出会えるワクワクがあるのだと知った。

本が売れた時も、「この本を読んで、この方はどう思うのかな」と言葉にすれば同じことが浮かぶのだが、その色彩はまったく異なる。私が好きだったあのページをこの人も好きであって欲しいし、私とは全然違うところにあるこの人の「好き」にも触れてみたい。

 


そこに姿がなくともなお、こんな新しいワクワクを教えてくれる華さん。あんたすごいよ。

 

 

 

 

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華さん視点でも記事を書いてくれました。

この時代に、はてブロ仲間がいるという奇跡。

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