大金持ちのドラ息子が、父親が決めた政略結婚を拒否して自らの愛へと突き進む物語。
ロマンチックでありながらも、無理しないハッピーエンドでとても好感が持てる話。
それなりに年を取ると「自分なりに生きる」ということが分かってくる。勧善懲悪や友情・努力・勝利の物語にさらされていた幼少期であれば、こんなエンディングは「甘っちょろい!根性叩き直さんかい!」と憤慨しそうなものだが、大人になると人間そうそう一朝一夕に心を入れ替えるなんてことはできないことに(そしてどんな人格の持ち主でもそれなりに周りに赦されて生きていけるということに)気づいてきて、その人なりの決着のつけかたで十分に心が救われたりもする。
主人公の、実際にはこんな人間がいたらいけ好かなくて仕方がないであろう甘ったれっぷりでも、彼なりのやり方で彼なりの最適解を導きだしたその結末には勇気づけられる(たとえ装飾だらけのフィクションであっても)。
そしてなにより「じいや」という職業の美しさといったら、ない。