旅するトナカイ

旅行記エッセイ漫画

書籍レビュー

書籍レビュー『真夜中の子供たち』ー『百年の孤独』と並び称されるブッカー賞の栄冠

『百年の孤独』が俄かに話題となっている中、なぜかそれよりも先に、「『百年の孤独』に並ぶ名作」「ブッカー賞中のブッカー賞」と謳われる『真夜中の子供たち』を先に読んだ。 真夜中の子供たち 上 (岩波文庫) 作者:サルマン ラシュディ 岩波書店 Amazon あ…

【漫画レビュー】「瑞々しさ」という、いずれ失われてしまうものー『メタモルフォーゼの縁側』

『メタモルフォーゼの縁側』という漫画をご存じでしょうか。 同人オタク界隈では人気の作品だと思うのですが、芦田愛菜ちゃん主演で映画化されて更に知名度も上がったのではと思います。 メタモルフォーゼの縁側(1) (カドカワデジタルコミックス) 作者:鶴谷 …

『推し、燃ゆ』ー世間の「当たり前」で、しんどい思いをする人の物語

イマドキなSNS炎上話かと思ったらそうではない、嬉しい裏切りだった。 主人公は「推し活」に心血を注ぐ女子高校生。 うまく社会に溶け込めない彼女の、日々の生活や人生に対する切実さがヒリヒリと読者の肌を刺す。 勉強はうまくいかずアルバイトをしても要…

【書籍】映画化した「望み」を読んだ

映画『望み』が劇場公開するということで、雫井脩介の原作小説を読んでみました。 感想マンガ(5ページ) 「どっちの結末でもバッドエンド」という地獄の二択で、なかなか本を閉じれないドキドキ体験でした。 まぁ正直いろいろなことを想定すると「結末はこ…

関西コミティア56 買ったものと感想

関西コミティア56に参加してきました。 関西コミティアは地元だしなるべくサークル参加するようにしているのですが、今回はうっかり申し込み忘れたので、午後にゆったり入場。 ※コミティア…同人誌即売会のひとつ。一般的にはコミケが有名だと思いますが、コ…

【書籍】カズオ・イシグロ入門の4冊

ノーベル文学賞受賞のニュースで知った、カズオ・イシグロ。 www.asahi.com ニュースを見てから読み始めた完全なニワカですが、同じように「話題になってるし読んでみようかな」って方の参考になれば。 // スポンサーリンク'); // ]]> // カズオ・イシグロの…

【書籍】自分を許すために - 「サラバ!」西加奈子

「魂の救済」ほど、書くことに意義のあるテーマはないと思う。 モノを書く人間として(というにはあまりにもアマチュアすぎておこがましいのだけど…)、これほど書きたいテーマはないし、書くことが難しいものもない。 それは「自分が生きることの意味」をそ…

【書籍】湊かなえ「母性」 - 「母性」なんてものはない

先日の記事(↓)で書いた「森に眠る魚」で母親モノにヤられたので、もう少し読み漁ってみようと思った。 fusako.hatenablog.com 近所の田村書店で角田光代を探したけど親子モノはあまりなく、ひとまず「かなたの子」は購入。 かなたの子 (文春文庫) 作者: 角…

【書籍】「わかる、わかるよ…!」ってなってしまった2冊

今年に入ってから「セックス・アンド・ザ・シティ」をhuluで全話+映画2本まとめて視聴した。 huluがあってよかった。ツタヤレンタルで全話視聴は、当日返却を頑張ったとしてもツタヤ破産してしまう。 セックス・アンド・ザ・シティ 2 [ザ・ムービー](吹き…

小保方さんの「あの日」を読んで

世間を騒がせた…という言葉はよく聞くけど、私はむしろ「世間が騒いだ」という感覚が近い。 人は誰かと関わり合い支え合いながら生きている限り、世の中を変えるような功績をたった一人の人が成し遂げるなんてことは(その功績が大きいものであればあるほど…

【小説】反乱のボヤージュ

先日、京都を歩いていたらすごい建物に出会った。 柵の塀が高くて、その奥に横長の古い建物が見えていて、アパートのようなんだけど、廊下に服が吊るされたり私物が乱雑に置かれたりしていて、何かの施設にしてはセキュリティが甘々だなぁ…と ドキドキしなが…

【書籍】最近面白かった「社会」の本

「社会」のことを語る本を、ゆっくりとですがいくつか読んでいます。 この半期くらいで面白かったものをいくつかご紹介。 社会を変えるには (講談社現代新書) 作者: 小熊英二 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/08/17 メディア: 新書 購入: 8人 クリック…

【社会学#7】女の生き方〜母・娘・祖母3世代の母親像〜

ずいぶん売れているようだったので読んでみた、「家族という病」。 家族という病 (幻冬舎新書) 作者: 下重暁子 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2015/03/25 メディア: 新書 この商品を含むブログ (4件) を見る 先に個人的な感想を述べると、 ずいぶんと頭ご…

【書籍レビュー】すべてがFになる

すべてがFになる (講談社文庫)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 1998/12/11メディア: 文庫購入: 16人 クリック: 241回この商品を含むブログ (559件) を見る ドラマは見ていなかったけど、先日、森博嗣のエッセイの中で「理系の本だと評された」と…

【書籍】科学的とはどういう意味か

たまたま手に入ったので読んでみた、ものの… 科学的とはどういう意味か (幻冬舎新書) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2011/06/29 メディア: 新書 購入: 3人 クリック: 146回 この商品を含むブログ (73件) を見る 居酒屋でおっさんのボヤキを…

【社会学#4】小市民の復権

使っていたiPhoneが水没で故障した時、私は絶望的な思いで修理屋へ向かった。 結局そのiPhoneはもう息を吹き返すことはなく、 他人行儀な新しいiPhoneを持ち帰り、家のパソコンにつないだ途端 iCloudが全ての私のデータを復活させてくれて、そのiPhoneは外側…

【社会学#1】言論の自由

今年はちょっと社会学に力を入れよう、と思い、本を読んでいます。 たまたま書店で見かけた「面白くて眠れなくなる社会学」(橋爪大三郎、PHP出版)がたいへん面白く、またその時々の社会的な関心ごとに応用できる話ばかりなので、備忘録もかねて思うところ…

【書籍】麒麟の翼

麒麟の翼 (講談社文庫)作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/02/14メディア: 文庫この商品を含むブログ (9件) を見る 女にとっての子どもって、なんて大きいのだろうなぁと思う。 その子がいなければ、彼女はなんとなっていただろうか。 そん…

人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな (河出文庫)作者: 山崎ナオコーラ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2006/10/05メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 130回この商品を含むブログ (313件) を見る途中、 「彼女が自分の意味だの、自分にできることだのできないことだの…

八日目の蝉

八日目の蝉作者: 角田光代出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2007/03メディア: 単行本購入: 8人 クリック: 264回この商品を含むブログ (321件) を見る最後に、池澤夏樹氏の解説があってよかった。 彼のおかげで、ふっと笑って、本を閉じることができた。…

レ・ミゼラブル

レ・ミゼラブル (1) (新潮文庫)作者: ユゴー,佐藤朔出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1967/05/12メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 75回この商品を含むブログ (19件) を見る世紀のエンタテイメント文学。 2010年出会った本の中で一番好きだった作品。 「ああ…

かもめ食堂

かもめ食堂作者: 群ようこ出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2006/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 30回この商品を含むブログ (241件) を見る映画がお気に入りだったので原作も読んでみた。 といっても、映画のための書きおろしなので一般的な「小説の…

海辺のカフカ

海辺のカフカ〈上〉作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/09/12メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 224回この商品を含むブログ (234件) を見る 社会学の権威・見田宗介氏によれば、近代以降は「やさしさ」の時代。 それを象徴するのが春樹文…

骸骨ビルの庭

骸骨ビルの庭(上)作者: 宮本輝出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/06/23メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 12回この商品を含むブログ (27件) を見る本の帯はさんざん煽るし、最初のフリはおもしろそうな匂いがするし、ドラマチックにしようと思えばいく…

裏庭

裏庭 (新潮文庫)作者: 梨木香歩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2000/12/26メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 41回この商品を含むブログ (144件) を見る冒険ものを書くのは上手くないらしい。 梨木香歩は「西の魔女が死んだ」「ぐるりのこと」を読んだけれ…

知と愛

知と愛 (新潮文庫)作者: ヘッセ,高橋健二出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1959/06/09メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 28回この商品を含むブログ (33件) を見る芸術に生きた男と、学問に生きた男。 前半しばらくはなんともしんどくって、途中なんてただの…

シッダールタ

シッダールタ (新潮文庫)作者: ヘッセ,高橋健二出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1959/05/04メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 45回この商品を含むブログ (120件) を見る純文学といえばヘッセといえば車輪の下、という方程式がどこかしらで成り立っていると…

日本人の選択

日本人の選択―総選挙の戦後史 (平凡社新書)作者: 林信吾,葛岡智恭出版社/メーカー: 平凡社発売日: 2007/06メディア: 新書 クリック: 6回この商品を含むブログ (4件) を見る戦後政治史の入門書。 政治のせの字も知らないわたしにはとっても親しみやすく、我な…

号泣する準備はできていた

号泣する準備はできていた作者: 江國香織出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2003/11/19メディア: 単行本 クリック: 38回この商品を含むブログ (178件) を見るあっちでもこっちでも、すべてがうまくいくわけではないいびつな恋のかたち。 そして自分のことを振…

グラジオラスの耳

グラジオラスの耳 (光文社文庫)作者: 井上荒野出版社/メーカー: 光文社発売日: 2003/01メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見るきんと冷えた氷のように鋭いのに、ゆらゆらと形が分からないまま放りだされる文章。 好きな人は好きなんだろうけど、個…