DVDを借りてきて一番楽しいのは、映画が始まる前の予告編を見ている時間だと思う。
いっとき借りてきたDVDにことごとくこの作品の予告編が入っていて、見るたびになんとも絵画のような風景の切り取り方や色彩や衣装の華麗さにほれぼれしてしまい、あまり冒険ものが好きなわけではないけどとうとう根負けしてしまった。
話は逸れるが、やはり広告を打つ上ではとにかく何度も目に触れさせることは大事だ、それだけでなんだかこっちも勝手に「見なきゃいけないかも」と思うようになってくるのだから。
さて作品に関しては、正直わたしの理解力が乏しいせいか、ストーリーの巧みさというか精度の高さが理解できたのは2回目観てからだった。しかし2回目観ればなるほど、そういうことがしたかったのか。よくできてるなぁ、と。
敵をやっつける冒険物語の裏に隠れていた、救済の物語。物語は、語部のものから聞手のものになる。
こんな方法で、人を絶望の縁から救い上げる方法があったのか、と感服してしまう。
そして一番の目玉は、何よりもそのヴィジュアル。
石岡瑛子の衣装はとてもチャーミングで、意表をつかれる(おそらくこれを観た人の全員が「そう開くんだ!?」と思ったはず、いやむしろ全員そう思ったと断言していい)。
また世界中の世界遺産で撮影が行われており、世界遺産のなんとも不思議な魅惑を切り取るカメラワークも秀逸。
最後の方で現れるパペットの描写は、ミシェル・ゴンドリーを彷彿とするクリエーティビティ。
そしてそんな美しいシーンはどれも、幼い少女の想像の産物ーだから完璧に作り込まれているのにどこか繊細でアンバランスで、垣間見える幼稚さがなんだかグロテスクにすら感じられる。その絶妙なラインの作り込みにも、作者の徹底的なこだわりが感じられる。
好きとか嫌いとか、泣けるとか泣けないとか、感動するとかしないとか、そういうことよりも、世界のどこかに存在する誰かの「渾身の力作」というものを一度味見してみるというだけで、この映画は十分だ。