旅するトナカイ

旅行記エッセイ漫画

『千と千尋の神隠し』の「魔女の契約印」が何なのかようやく理解した

全国の映画館で再上映しているので、見てきました…千と千尋の神隠し

 

当時、映画館で見ることはできず、DVD発売後すぐに買って(キャンペーンで「ハクのおにぎり」フィギュアがついてきて「なんだこれ…」ってなった)、何十回見ても主な感想はいつも何度でも「りんさんが最高」「登場した瞬間からラストシーンまで全てにおいて完璧な人間」「りんさんみたいな立派な人になりたい」だったのですが、逆に細かい設定やキーワードについては「やっぱりどうも分からん」というままでした。

 

 

 

 

 

そこで頼りになるのが、かの岡田斗司夫ゼミ

(この方、アクの強い人だなぁ…と思って半信半疑で見ていましたが、調べてみたら日本アニメ界の超ビッグネームでした…)

 


母親はなぜ千尋に冷たいの?『千と千尋の神隠し』ウラ読み解説

 


ハクの正体は●●!感動と怖さの両立『千と千尋の神隠し』完全解説

 

 

千と千尋の神隠し』を見たことがある方、設定に疑問が残っている方はこれらの動画をぜひ見てみてください。

基本的にこのブログ記事も、これら2本の動画を踏まえて「話はそれからだ」な内容になっています。

 

 

さて、これらの動画を見た上でまた映画館で見てみると、ようやくいろいろ紐解けました。「魔女の契約印」って何なん問題。

 

唐突に映画に登場した重要アイテム「魔女の契約印」

でもこれがなんなのか、よくわからないまま映画は進行してしまいます。

あまつさえ銭婆が千尋に「これが何だか知ってるかい」と聞くシーンがあるのに、千尋は「わかりません、でもとても大切なものだって」とスルー。「そこを聞いてくれよ…!」とこっちは思っているのに。

 

「魔女の契約印」とは何なのか。

なぜ銭婆が持っていたのか。

なぜハクはそれを盗んだのか。

なぜ湯婆婆は盗ませたのか。

 

苦節20年、ようやく私なりに「魔女の契約印」が理解できたので、私なりの考察を書いておきます。

もしかしたら既に同じ話を(または、もっと深い話を)誰かがしているかもしれませんが、ご了承ください。

 

 

1. そもそも「魔女の契約印」とは

千尋が迷い込んだこの世界は、ガチガチの契約社会です。

 

冒頭、千尋が湯婆婆に「働かせてください」と頼みに行っても「これ以上、穀潰しを増やしてどうするんだい」と嫌味ばかりで取り合わなかった湯婆婆なのに、坊の動乱に乗じて「ここで働きたいんです!」と坊を煽る千尋にとっさに放った「分かったから静かにおし!」の言質だけで、しぶしぶ雇うことにする。

 

普通、湯婆婆と千尋ほどに立場・権力・身体能力の差があれば、坊をなだめ終わった湯婆婆が「さっきはああ言ったけど、あれはさ、勢いっていうかさ、まぁ勘弁してよ」とか言ってごまかすことは容易なはずです。なのに妙に律儀に言ったことを守り、雇用契約書を取り出して千尋にサインさせます。

ポロッと出た口約束すら反故にはできないのが、厳しい契約社会に縛られたこの世界なのでしょう。

 

千尋がチンタラとサインしている間に、荒れた部屋を片付けながら湯婆婆はぶつぶつ独りごちます。

「まったく、面倒な契約をしちまったものだよ。働きたい者には仕事をやらないといけない、だなんて…」と。

 

そうです、このガチガチの契約社会において、湯婆婆もまた誰かと契約していたのです。

魔法の力を得る代償として、働きたい者を無条件で湯屋に雇い入れ「この世界に雇用を生む」ことで社会に貢献する、という契約を。 

湯婆婆は大金持ちになるために魔法を欲しがっており、それでは危険なので「湯屋を経営して雇用を生む」ことでお金は稼ぐように、と条件づけられたのかもしれません。

 

このように、一定の条件のもと魔女の力を得られるのが「魔女の契約印」なのです。

 

 

2. 共同契約者・銭婆

話を少し飛ばして、千尋が銭婆に会いに行くシーン

金銀宝石が大好きで欲深い湯婆婆と違って、双子の姉の銭婆は素朴でナチュラル派な田舎暮らしをしています。

日常生活に魔法を使って楽するのではなく、自分の手でドアを開けたり編み物したりと、「手をかける」ことに価値がある…という美意識の持ち主。魔法の火でタバコを吸う湯婆婆とはえらい違いです。

 

さて、はるばる訪ねてきた千尋に銭婆が語ります。

「私たちは2人で一人前」「双子の魔法使いなんて良いことない」と。

つまり湯婆婆・銭婆姉妹は、2人セットであることを条件に魔女になれたようです。

 

銭婆は魔法に興味はありません。自分の体で自然に暮らしたい銭婆に魔法は必要ない(千尋の道案内は魔法の街頭にやらせてましたけど、一人で自活するのに魔法は使ってなさそうです)。きっと魔法の力を欲しがったのは、派手好きで豪勢な暮らしに憧れている湯婆婆のほうでしょう。

 

姉妹に魔法を授けた「契約者」は、湯婆婆の激しい性分を見抜いていました。

気に入らないことがあると激昂したり、坊を溺愛して部屋に閉じ込めるほど執着心と支配欲が強く、ややこしい客から従業員を守るほど義理人情に厚い。

良くも悪くも「熱すぎる」性格の湯婆婆が、自由に魔法を使えるのは危険が大きい。

 

 

なので契約の際に、湯婆婆と銭婆が2人共同で契約主体となること、そして契約の変更や更新に必要な「魔女の契約印」は銭婆が保管し、湯婆婆が盗まないよう呪い(まじない)をかけておくことが契約条件だったのでしょう。

 

そうして銭婆は、のどかなら田舎暮らしをしながら「魔女の契約印」を保管する役目を負うことになりました。

 

 

3. 湯婆婆がハクに盗ませた理由、ハクが死にかけた理由

さて、話を巻き戻してこの映画の盛り上がりポイント。竜の姿のハクが、銭婆の式神に襲われながら湯屋へ帰ってきます。

ハクは「魔女の契約印」を銭婆から盗んでくるのですが、ハンコにかけられていた呪いによって命を食い荒らされ、式神の攻撃を受けて傷だらけで戻ってきます。

 

ハクを助けるために湯婆婆の部屋へ向かって行った千尋は、坊の部屋からこっそりと湯婆婆の声を盗み聞きます。

「そいつはもう役に立たないから、処分してくれ」と。

 

冒頭に紹介した岡田斗司夫ゼミで、湯婆婆は「愛情深すぎる人」として解説されています。

従業員たちをあまりに深く愛してしまうので、その裏返しで離れていこうとする人には冷淡になってしまう、と。

 

私はこれには少し疑問があります。

湯婆婆は、ハクのことは(能力が高く優秀な弟子として目をかけてはいたが)あくまで利害関係が一致したので居させていただけなのではないか、と。

義理人情に厚い性格なので、ひとたび雇い入れた身内には厳しくも優しい湯婆婆ですが、ハクに関してはただただ厳しかったのではないでしょうか。湯屋は福利厚生の手厚いホワイト企業で、従業員たちもなんやかんや文句を言いながらも和やかでアットホームな雰囲気です。対して、魔法の弟子になったハクは釜爺曰く「どんどん顔色も悪くなって、目つきばかり鋭くなって」いったそう。坊やペットたちのように可愛がられてもいません。

傷だらけのままゴミ箱のような穴に落とされそうになったり、千尋を助けたいと言ったら「そのあと私に八つ裂きにされてもいいんかい」と脅したりと、ハクは何度も湯婆婆に命の危険にさらされています。

 

ハクは湯婆婆から「言うことを聞かせるために」と呪いをかけられていました(泥団子を食べて吐き出したハンコに付いていた虫です。千尋が踏み潰しました)。逃げられないよう呪いをかけられ、ただただ湯婆婆の厳しい指導を受け、利用されていたのではないでしょうか。

 

湯婆婆に魔法の指導をお願いしたのはハクです。釜爺に止められても聞かず、魔法を教えて欲しいと湯婆婆に依頼しました。(その理由は定かではありません。いち労働者にとどまりたくない川の神としてのプライドだったのか、なにかの因縁で魔法が必要なのか、千尋が関係しているのか…。)

 

湯婆婆は、魔法を使いたいというハクを利用することを思いつきます。

ハクに魔法の修行をさせて、強くなったら「魔女の契約印」を盗んでこさせよう、と。

 

湯婆婆は、今の湯屋の主人という立場や魔法の力に満足する人物ではありません。より優雅に暮らしたい湯婆婆にとって、湯屋を切り盛りし、雇用を生み続けないといけない魔女の契約条件は「面倒な契約」です。

 

銭婆が保管する「魔女の契約印」を手に入れれば、契約を変更してこんな暮らしとはおさらばできる。

しかし、契約印を盗むと呪いによって攻撃を受けてしまう。

 

そこで、ハクに魔法の力を教え、ハクに代わりに盗ませることにします。

 

ハクは湯婆婆の目論見通り、魔法の力はめきめきと伸ばします。

とはいえ「魔女の契約印」が存在するということは、ハク自身も本当の魔法使いになるには「契約」が必要なはず。

おそらくこの世界の「魔法」は、師匠から教えてもらうこともできるけど、最終的には「契約」が必要なライセンス制なのでしょう。

 

力をつけたハクに湯婆婆は言い渡します。「魔女の契約印を銭婆から盗んでくることができれば、お前も一人前の魔法使いになれるし、私の支配から解放してやる」と。

「魔女の契約印」を盗んでくることが、湯婆婆からハクへの最終試験だったのではないでしょうか。

 

ハクは決死の覚悟でハンコを盗み、その結果、追手に襲われて戻ってきます。

 

傷だらけのハクを湯婆婆は助けようともせず、処分しようとします。

「最後の試練に合格できなかった落第者は、もう不要だ」「ハクほどの実力者ならハンコを盗んでこれると思ったが、期待外れだった」ということです。

 

ちなみに…この時、湯婆婆は「ハクがハンコを盗み出せていた」ことを知っていたのかは微妙です。

ハンコを盗む手前で銭婆の魔法に攻撃されて帰ってきたのだと思って、「そんな役立たずな竜は用済みだ」と思ったのか。

ハンコは盗んできたが呪いに打ち勝つことはできず、命を食い荒らされてこのまま(ハンコを飲み込んだまま)死んでしまうと思ったのか。

後者の場合、大切なハンコを体内に持っているハクを穴の中へ処分しようとするのは引っかかります。あの地下の掃溜のようなところから、後でハンコだけ救出すればいいと思ったのでしょうか。どのみち呪いがある限り触れられないから、いっそ紛失したことにした方が得策だと考えた可能性もあります。

ただ、湯婆婆の様子を見るに、ハンコを手に入れて喜んでいるというよりはハクに呆れて諦めているような雰囲気だったので、前者と考えた方がいいのかもしれません。

 

とにかく、ハクと湯婆婆は「魔法を教えてもらう」「その代わりにハンコを盗んでくる」というギブアンドテイクの関係で、最終試練のハンコを盗んでくるミッションに失敗したハクを、湯婆婆は冷たく見捨てたのでした。

 

 

4. 「魔女の契約印」の呪いはどこへいった

さて、前述の通り「魔女の契約印」には呪いがかけられています。

しかし千尋は問題なくハンコを持てていたし、銭婆もそのことに驚いていました(千尋からハンコを受け取った銭婆は「お前、これを持っていた何ともなかったのかい? …おや、呪いが消えてるね」と気づきます。)

 

映画を一見すると、その呪いはハンコとともにハクが吐き出した「ヘンな虫」で、千尋が踏み潰したために呪いが消えたように見えます。 

しかし、あの虫はハンコを守るセキュリティシステムではなく、湯婆婆がハクを操るために住まわせたものだと銭婆が解説します。

 

では、ハンコの呪いはいつ消えたのか?

 

明確な答えはありませんが、

・呪いがハクの命を食い荒らしていた

千尋がハンコを手に取ったときには既に消えていた

ということを鑑みるに、「川の神様の泥団子によって解けた」と見るのが妥当かも?と個人的には思っています。

 

 川の神様の泥団子に、悪い呪いを浄化する力があるのか…団子の活性化パワーによって、ハクの魔力が体内の悪いものを消し去ったのか…。

 

ハクがハンコを吐き出す際に、まず泥の塊のようなものを吐き出します。それがシュウ〜と溶けて、そこからハンコと「虫」が現れるので、もしかしたら呪いは泥の部分だったのかもしれません。

 

団子を食べたカオナシも、欲望や食った人物たちを次々と吐き出すので、泥団子には「とにかく良からぬものを排出させられる」効能があったようですね。

 

 

5. 銭婆のもとに戻った「魔女の契約印」

千尋の決死の活躍によって(電車で銭婆のもとへ向かうとき、千尋の横顔は「もうこの世には戻れないかもしれない…」と死を覚悟していたように見えました)、結局「魔女の契約印」は銭婆の手に戻ります。

おそらくまたセキュリティの呪いをかけられて、ハンコは銭婆が大切に保管するのでしょう。

 

さて、これによってその後の登場人物たちの運命は、どうなるのでしょうか?

もちろん完全なる妄想で、公式の見解なども見聞きしたわけではないので、聞き流しながらご覧ください。

 

湯婆婆は、完全に作戦失敗。契約の変更はできず、今まで通り経営者の苦労を味わいながらこの世界の雇用を守ることになります。仕事の面では変化はありませんが、坊が千尋との旅を通して自立し、ハクとの支配関係も切れたことで「子離れ」が進んで、少しは愛情の激しさがまろやかになるかもしれません(坊とハクを諦めて、また別の支配対象を探すだけの可能性もありますが…)。

 

ハクは、魔法使いになる方法が断たれたように思われます。しかし名前と出自を思い出して、憑物が落ちたような晴れやかな顔をしていたので、もう自分に魔法は必要ないと悟ったような気がします。今持っている魔法スキルで全然イケる気もしますし、川の神様だと分かったら他にも能力やパワーが開眼するのかもしれません。

そもそも「魔法」というもの自体、この世界では「神様」になれない平民たちがより強力な力を得るためのライセンスだとしたら、「神様」であるミギハヤミコハクヌシには魔法は必要ないでしょう。

 

「魔女の契約印」は「沼の底」で、穏やかな銭婆とようやく居場所を見つけたカオナシに守られていくのだと思います。

 

 

長年の謎だった「魔女の契約印」について、私からは以上です。

 

 

上映期間、たぶんまだ間に合います

 

DVDも持ってます。

 

 

 

 

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