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ぜんぶ、フィデルのせい

ぜんぶ、フィデルのせい [DVD]

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とっても「大人」な「子供」の映画。
知的好奇心旺盛で、大人に媚びずいつもムッスリしていて、ついでに行動力もたっぷり持ち合わせた彼女がほんとうに、子供ながらとても「かっこいい」。
親に対して怒鳴ったり、モノ申してきた友達に牙をむいたり、父親のルーツを探ろうと旅に出たり。眼に映るいろいろなもの、聞いた話や歌をひとつひとつ吸収して自分のものにしながら、それにつれ成長する自分の信念を貫く。ロックミュージシャンの生きざまみたいだ。


大人になると、子供のころ考えていたこととか、考え方とか、忘れてしまうけど、それをリアルに鮮明に再現している監督はすごいな、と思った。
子供の作り方を教えてくれない大人が変だ、とか。
「違っている」子を仲間はずれにするけれど、ちょっとしたことでまた一緒に笑い出す、とか。
なんだか、ああそうだったなぁ、と思う。昔の懐かしい遊びの話をしてる時みたいな。
カメラワークが特別いいということはないけど(でもおもしろいカメラ使いをしようと試みてる感じは見えたので、今後に期待したい)、子供の映し方がすごく、上手だ。


チリ・クーデターという大人向けなテーマにも、大人を入り込ませていないのがまた良い。
善悪や正誤がまだはっきり分からない子供の視点そのままに、1970年代の出来事を、両方の側に立ちながらどちら側にも立たず、いろいろな人の視点を織り交ぜて描いている。特にわたしはその当時のことなど想像もつかないから、こういった説明の仕方がいちばんすっと入ってくる。どちらかのサイドから見た話だと、どうしても「じゃあその逆は?」と聞きたくなるもの。


ついでに音楽もとてもよかった。
それだけで聞いて満足できるものではきっとないけれど、場面にすごくいい味付けをしている。音楽ありき、といえる場面も多々あるもの。アルマンド・アマール。ちょっと「アメリ」のヤン・ティルセンぽいのもあった。フランス音楽がいいのか?


そしてやはり、フランスの色合いってすごくいいなと思った。
家の壁のワインのような赤がとても美しいのだ。