ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展を見てきました。
わりと会期ギリギリだったので慌てて感想を書きます。
※10/8 21時 誤字修正しました。
★「バベルの塔」に対する見方が全く変わりました
この絵、マジで細かい。
3mm以下のサイズで描かれた人、人、人…
言われてもちょっとすぐにはわからないんですが、よく見るとちまちま白ゴマみたいなのがいて「これ全部人だったんだ!」と驚きます。このサイズの絵の中に1400人描かれているとか。
それもこんな小さいのに、一人一人が何をしてるのかちゃんとわかるほど描き込まれている。えっちらおっちら当時の技術でレンガを運んでいたり、大名行列がいたり。
あと塔は階ごとに窓のデザインが微妙に違っていて「時代が進むほど技術が進歩して窓の衣装も変わる」ということを表している、という見方も。
何も知らずに絵を見てた時には「7階建てで天にまで届くわけないじゃーん、もぉ〜昔の人はしょーがないなぁ〜」とか思ってたんですが、思ってた7階建てと全然違ってほんとおみそれしましたって感じです。
それ以前のバベルの塔の絵はやっぱりまだ当時の人の想像が及ばなくて二階建てのかわいいお家だったりするんですが、この絵が当時、バベルの塔の概念のみならず「デカい建築物」のイメージ形成に大いに貢献したであろうことは想像に難くない。
個人的に「天井が高い建物」萌えなのでワクワクしました。ここ住みたーい。
こういった細かい見所を展示会場でも解説しながら見せてくれるので「なるほどなぁ〜」って終始感心しながら鑑賞。
見れば見るほど、ブリューゲルの性格の細かさがありありと見てとれます。たぶん細かすぎて日常生活とかちょっと面倒くさそうなレベル。画家でよかった!
★めっちゃ研究している人がいる驚き
こういった解説が見れるのも東京藝術大学の研究チームのおかげ。
あと「AKIRA」で有名な大友克洋が「INSIDE BABEL」という、バベルの塔の内部を上書きした絵も展示されています。
漫画家・大友克洋さんが描く「バベルの塔」INSIDE BABEL|プロジェクトBABEL|ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 BABEL 16世紀ネーデルラントの至宝 ―ボスを超えて―
これだけの人たちが情熱を燃やす「バベルの塔」。おそろしい魔力ですね。
今までの名画鑑賞ってだいたいが「へーこれがあの、へー」ってくらいで、せいぜいどんなシーンが描かれてるかの解説ぐらいしかなかったんですが、じっくり研究する人がいて、その人の解説を聞いてここまで見方が変わるって体験は初めてです。
そういう意味でわざわざ見に行く意味があった。
★見る人を狂わせる魑魅魍魎ズ
こちらは同じネーデルランド出身の画家ヒエロニムス・ボスシリーズ。
展示されている中で本人が描いた絵は数点だけなのですが、彼の没後16世紀半ばに「ボスの画風っていいよね!ボス風な絵、おれも描いちゃおーっと!」という「ボス・リバイバル」が起こります。その時の絵がこれでもかというほど数多く展示されている。
現地の「弱肉強食」を表すことわざ「大きな魚は小さな魚を食う」のほか、ミケランジェロの絵で有名な「最後の審判」や、キリスト教に伝わる「七つの大罪」「七つの徳目」といった題材が、なんともキモくてごちゃごちゃした絵に仕立てられている。
その中に現れる数々の魑魅魍魎。
キモイんです。キモイんですけど、見てるうちに可愛く見えてくるんです。
当時の絵に描かれている人物って、無表情が多いんですよね。(個人的には「宗教画」の用途上、見る人の心境によって笑ってるようにも悲しんでるようにも見える微妙な表情が求められていたためじゃないかと勝手に思ってるんですが。)そんな中で、妖怪みたいな化物みたいな魑魅魍魎たちはとても表情豊か。それがなんとも、見ていてクスッとしてしまうのです。
それにしても、このキモさ。
ノルウェーの妖精「トロル」に通ずるものがあります。↓
土着の妖精をこういうデザインにしちゃうあたりを見ても、北国の人たちの「キモかわ」感覚には理解しがたいものがある。
★ミュージアムショップが憎い
魑魅魍魎ズのカラフルTシャツやブロマイド的ポストカードは、アイドルグッズさながら。中でもセンターの「タラ夫」はLINEスタンプにまでなってるらしいです。あざとい…!!
「バベルの塔」グッズも負けていません。
バベルの塔の壁面の柄のタオルをオムツケーキよろしく積み上げて「タオルの塔」と言ってみたり。(あんなにフォトジェニックなのに撮影NGだった。画像検索したら出てきます)
これからの季節を意識した「バベルの塔」スノードーム。
(公式サイトより)
もうなんでもありやな。
乗せられて買ってもたがな。
★もうすぐ終わります。
現在、大阪・中之島の国立国際美術館で開催中。これが終わったら絵たちは本国に帰ってしまうようです…。
会期はあと一週間、10月15日(日)まで!
金・土は21時まで開館しているので狙い目です。
ちなみに、版画とかかなり細かいのでオペラグラスを持ってる方は持参することをお勧めします。「視力低めだけど裸眼でいっかー」とかもってのほか。ぜひともご自身の最も高い視力を以て臨んでください。
あと、行く前にこの記事を読みました。
「日曜美術館」で大友克洋がバベルの塔について語ってるのがまとまった記事。
予習する時間がある方は、ぜひ。
全体的にわりとボリューミーで楽しかった!おすすめ!
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